平成24年度税制及び税務行政に関する建議書
1 はじめに
日本経済は、2008年に起きた世界的な金融資本市場の混乱から、いまだに抜け出せない状況が続いている。2009年9月に発足した民主党政権も、財政再建や社会保障等の改革を進められない。日本の財政赤字がますます大きくなる中で、少子高齢化や経済格差、そして地球環境にも配慮した、税制の抜本的改革を考えなければならない時期にある。
日本国内の生産と輸出の落ち込みが止まらず、設備投資の減少、企業収益の悪化が続いている。雇用の促進も進まず、家計への圧迫、そして個人消費は冷え込んだままだ。消費税の税率アップもやむなしとの声も出てきたが、このような状況の中、税制が経済や景気から受ける影響、逆に経済等に与える影響も大きく、税制改革については慎重な取り組みが必要である。
2 基本的な考え方について
税理士法では、「税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。」と規定されている。この規定に基づき、各税理士会では、公平かつ合理的な税制の確立と申告納税制度の維持・発展を目的として、税制改正に関する建議書を毎年作成している。その基本的な考え方は以下のとおりである。
仝平な税負担
◆〕解と納得のできる税制
必要最小限の事務負担
ぁ〇代に適合する税制
ァ‘明な税務行政
3 建議書の構成と概要
関東信越税理士会(以下、「本会」という)の建議要望は、基本的に前年度分を参考とし、会員から収集した項目を中心に本会調査研究部において取りまとめを行い、理事会における審議を経て公表している。なお、「税制改正大綱」等に取り上げられた項目や詳細な検討の上で新たな意見形成が必要な項目については、建議書への掲載を見合わせている。
本建議書は、45項目の要望について「税制に関する建議・要望項目」、「税務行政に関する建議・要望項目」に大別した上で、税制に関しては、税目ごとに分類している。概要は以下のとおりである。
税制に関する建議・要望項目
一 国税通則法関係(6項目)
納税者の権利の保護を図り、税務行政の透明性を求める内容の項目を挙げている。
・ 後発的事由がある場合の更正の請求期限延長
・ 不服申立ての決定又は裁決があるまでの徴収猶予
・ 遡及課税禁止の規定の新設
二 所得税法関係(13項目)
資産損失・譲渡所得関係
・ 土地等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除を認めること
・ 事業用資産の譲渡損失を必要経費に算入
・ 上場株式に係る譲渡損失の繰越期間は無制限とすること
給与所得関係
・ 給与所得者について確定申告を原則とし、年末調整は選択制とすること
届出・提出期限の関係
・ 財産債務明細書の提出廃止
三 法人税法関係(5項目)
・ 役員給与の定期同額給与の廃止
・ 交際費課税の廃止
四 所得税法・法人税法共通関係(2項目)
・ 電話加入権について減価償却資産として償却を可能とすること
五 相続税法関係(4項目)
六 消費税法関係(4項目)
・ 簡易課税等の適用について当該事業年度の課税売上高に基づく判定とすること
七 地方税関係(5項目)
・ 個人事業税の事業主控除額の引き上げ
・ 固定資産税・都市計画税について評価の適正化を図ること
税務行政に関する建議・要望項目(6項目)
・ 内部通達を含め法令解釈通達をすべて公開すること
・ 税務訴訟の判決をデータベース化して公表すること
・ 「アフタールーリング制度」の新設
■ 税制に関する建議・要望項目
一 国税通則法関係
1 後発的事由がある場合の更正の請求期限を、事由確定の日から現行2か月以内を1年以内に変更すること。(通法23◆法 雰兮魁
(理由)
この規定は、後発的な減額事由が発生した場合の納税者の権利救済規定であり、その目的を達成することができるよう、手続期間を十分確保する必要がある。2か月以内では期間を徒過することがあるため、期間を延長すべきである。
2 納期限の翌日から2月を経過した日以後の延滞税の割合(年14.6%)を引き下げること。(通法60、法法75、所法131) (継続)
(理由)
延滞税には、遅延による行政処分的役割がある。しかし、過去に例を見ない低金利の状況を勘案し、14.6%部分についても、特例基準割合(基準時点の基準年利率+4%)の2倍程度の割合を適用すべきである。
3 不服申立てをした場合に、その不服申立ての決定又は裁決があるまで徴収を猶予すること。(通法105) (継続)
(理由)
課税処分について不服申立てをしていても、徴収を猶予しないため、その税金を納期限までに完納しなければ、督促や差押えなどの滞納処分が行われてしまう。その不服申立てについての決定又は裁決があるまでは徴収を猶予して、不服申立ての手続に集中できるようにすべきである。
4 災害等による期限の延長の理由に、「税理士及び税理士事務所の災害」等の文言を加えること。(通法11) (継続)
(理由)
中小法人及び個人納税者は、税理士事務所への依頼割合が大きいため、納税者だけでなくその関与をする税理士事務所の災害等も期限の延長の理由に加える必要がある。
現実に、平成16年の中越地震では、多くの税理士事務所がその機能回復に一ヶ月以上を要し、業務遂行に重大な支障が発生した。
5 還付を受ける税額と納付すべき税額があった場合、還付金の充当を納税者が選択できるようにすること。(通法57) (継続)
(理由)
納税者に納付すべき税金と還付すべき税金があった場合に、課税庁は還付金をこれに充当することができる旨定められている。申告納税制度を採用している以上、納税者の側でも、申告納付時に還付金の充当を選べるようにすべきである。
6 期間税の場合も含め、遡及課税禁止原則の規定を設けること。(通法15) (継続)
(理由)
遡及課税には、真正遡及課税と不真正遡及課税がある。真正遡及課税とは、既に完結した所得・収益・財産・行為又は取引を新たな課税物件とみなして遡及して課税したり、納税義務を加重したりする方法により課税することをいう。不真正遡及課税とは、現在進行中の行為又は事実について新たな課税物件としたり、納税義務を加重する立法により遡及して課税したりすることをいう。
所得税・法人税・消費税といった期間税について、課税期間の進行途中に、納税義務者に不利となる法令を改正し、これを課税期間開始日から遡及して適用するのも不真正遡及課税の一種とみなされている。
遡及立法は、現在の法規に従って課税が行われるという一般国民の信頼を裏切り、その経済活動における予測可能性や法的安定性を損なうことになる。期間税のように、当該取引等により直ちに納税義務が確定せず、期間の中途で行われた法改正の後に、期間が終了する時点で納税義務が成立するものであっても、納税者は当該取引等の時点における租税法規に従って当該取引等に関する納税義務が成立するのであろうと信頼するのが通常であると考えられ、このような場合においても、その信頼を保護する必要がある。
合理的根拠があり、遡及課税が立法府の自主的な判断に従って行われる場合、民主主義の観点から、その立法裁量は尊重されるべきとの見解はあるが、税の専門家ではない一般国民の視点に立てば、法令が改正されることを予測できた者とできなかった者がいることの不公平は、納得し難い。
よって、徴税側ではなく納税者の視点で税制を築くという観点から、この規定の新設を提案する。
二 所得税法関係
1 不動産所得・雑所得を生ずべき業務用資産についても、事業用資産と同様の資産損失制度とすること。(所法51ぁ法 雰兮魁
(理由)
資産損失は、前年以前の所得金額を修正する機能があるため、事業用資産以外の資産についても考慮すべきである。事業に準ずる不動産所得であっても、例えば、ビルを取り壊して新しい事業を行うなどの場合、その資産損失は、翌期繰越しもできないので、救いようがない。
2 土地・建物等の譲渡により生じた損失について、損益通算及び繰越控除を認めること。
(所法69、措法31、32) (継続)
(理由)
損益通算は、所得の種類を問わず適正な担税力に応じて課税をするという、課税原則の基本理念を実現するための制度であるが、土地建物等の譲渡損失について損益通算及び繰越控除を認めないことは、担税力を失った部分に対しても課税することになり、分離課税と総合課税との仕組みの差はあるものの、課税上の問題がある。
3 事業用資産の譲渡損失の所得区分を変更すること。(所法51、69) (継続)
(理由)
不動産所得、事業所得の事業の用に供される固定資産の資産損失は、各種所得の必要経費に算入される。しかし、譲渡損失は譲渡所得となり、損益通算が制限されている。事業や不動産経営を廃業するときには、その事業の用に供していた固定資産を売却することが多い。その際発生する譲渡損失は、これまでの事業所得や不動産所得の修正、清算としての性格を有する。事業用資産の譲渡損失は、事業所得又は不動産所得の必要経費に算入すべきである。
4 不動産譲渡に当たり、取得費不明の場合でも、譲渡直前に改良等の費用支出を行うことがある。その場合でも概算取得費控除(5%)を選択すると、改良等の費用か概算取得費のいずれか高い方しか控除の選択ができない。譲渡前10年以内の改良等の費用支出が明らかな場合、次のように取扱いを改めること。(措法31の4) (継続)
譲渡の対価 −(改良等の費用 − 経年減価の額)= 概算取得費控除基準額………A
(A×5/100)+(改良等の費用 − 経年減価の額)= 取得費
(理由)
譲渡の対価が如何にして構成されるかを考えたとき、現行の方法は甚だ不合理である。比較的新しい時期(譲渡前10年以内)に施された改良等は、価格形成に作用すると考えられる。
5 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除期間を無期限とすること。(措法37の12の2) (継続)
(理由)
「貯蓄から投資へ」という政策により、個人の資金が投資へと流れたが、2008年の世界的な金融危機に伴い発生した株価暴落により、多数の個人がかなりの損失を被ったと考えられる。
現行税制では、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除期間は3年とされているが、この期間を無期限とすることで、個人が安心して投資活動を行える環境を整える必要がある。
6 「土地等の負債利子の金額は、所得税法第69条1項に規定する損益通算の対象とされない」規定は、廃止すること。(措法41の4) (継続)
(理由)
バブル経済時に施行されたこの規定は、土地の異常な高騰を抑制するために立法されたものであり、現経済下においては本規定を存続させる必要性は認められない。
7 所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)、57条(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)を廃止すること。(所法56、57) (継続)
(理由)
戦後創設されたこの規定は、世帯を課税単位とするものであり、個人単位課税を原則とする現行の所得税法の例外的規定である。親族に支払う労働や役務提供の対価については、その実情に応じて経済的合理性の観点から判断されるべきであり、生計を一にする親族というだけで、必要経費算入が否定されるべきではない。
8 給与所得者についても確定申告を原則とし、年末調整は選択制とすること。(所法183 〜198) (継続)
(理由)
給与所得者自らの責任において、税額を計算し納税する制度が民主主義的租税制度に適するものである。また、雇用者に対して、配偶者のパート収入や障害者手帳等の提出など、プライバシーの開示をしなければならない制度は改めるべきである。
これからは、所得税の徴税コストを民間企業に負担させるべきではなく、今後は電子申告の普及促進を図り、確定申告を原則とするべきである。
9 源泉所得税関係について、次のようにその取扱いを改めること。 (継続)
(1) 納期特例制度は、承認申請ではなく届出制とし、その届出月から納期の特例を認めること。
(2) 個人事業の新規開業者及び新設法人については、その届出が「開業届」又は「設立届」の法定期限までに提出された場合には、納期の特例適用を開業の日又は設立の日から認めること。
(3) 源泉所得税の納期の特例が認められる基準に、給与の支払を受ける人数だけではなく、税額の基準も加えること。(所法183、212、216、217)
(理由)
(1) 納期特例制度は承認申請となっているが、これを届出制として、当該届出月からの適用を認めるべきである。
(2) 個人事業の新規開業者及び新設法人について特例制度を設けて、その届出が「開業届」又は「設立届」の法定期限までに提出された場合には、徴収義務者の便宜と税務行政の円滑な運営を図る観点から、開業の日又は設立の日から納期の特例の適用を認めるべきである。
(3) パート社員の雇用が増えている昨今の状況を考慮し、源泉徴収税額が一定額以下の企業は、給与等の支払いを受ける者の人数を問わず、納期の特例規定を適用可能にする等の基準を加えるべきである。
10 所得税法第124条に規定する申告書(準確定申告書)の提出期限を、相続税の申告期限と同一にすること。(所法124、125、消法45) (継続)
(理由)
準確定申告書の提出期限が4か月ということは、一般納税者に知られていないが、納税者の死亡後提出する相続税の申告期限は、周知徹底されてきていること、相続財産の分割後に申告が可能となる点も考慮して相続税の申告期限と同一にしてほしい。
11 青色申告の承認申請の期限を相続による事業承継の場合には、事業承継者の確定申告期限までとすること。(所法144) (継続)
(理由)
被相続人の事業承継をするにあたり、相続人間での協議に十分な時間を必要とするため。
12 税務署に提出すべき法定書類については、次のとおり改めること。(所法232、所規93◆法 雰兮魁
(1) 財産債務明細書の提出制度を廃止すること。
(2) 法定調書の提出について給与等の源泉徴収票の添付を廃止すること。
(理由)
(1) 所得税の確定申告については、必要最低限の提出書類で足りるようにすべきである。財産債務という個人情報を一定の収入額以上の者に一律に求めるのは、納税者に対する権利保護、プライバシーの観点から問題である。
(2) 給与支払者は、市町村に受給者全員の給与支払報告書の提出を行っている。将来的には、国税と地方税の一元化により、提出書類の省略を図るべきである。
13 認定NPO以外のNPOに対する寄付金も寄付金控除を認めること。(所法78、120、措法41の18の3) (新規 栃木)
(理由)
現在NPOに対する寄付金控除が認められているのは認定NPOのみである。しかしながら認定NPOの数は限られており、ほとんどのNPOは特定寄付金の対象となっていない。これらの団体は、最近の経済状況の後退により、財務的に非常に逼迫しているのが現状である。そこでNPOの普及を単なる流行にしないためには、金額の上限を設けるなどの措置は必要ではあるが、原則としてNPOに対する寄付金も寄付金控除の対象とすべきである。
三 法人税法関係
1 役員給与の損金不算入の規定を改め、定期同額給与の原則を廃止すること。(法法34) (継続)
(理由)
会社法では、役員に対する給与については費用性を認めている。役員は会社経営の最高責任者であり、その役員に対する報酬が定期同額の原則から外れた場合に認められないというのは制度として不適切である。
2 交際費課税について、社会通念上必要な支出は課税除外とし、定額控除限度額以内の支出額の10%課税も廃止すること。(措法61の4) (継続)
(理由)
交際費課税の趣旨は、企業の冗費・濫費の抑制にあると理解するが、課税強化により、社会通念上必要とされる慶弔費等にまで課税されることの不合理が明らかとなっている。さらに、定額控除限度額内の定率課税も、その理論的根拠に乏しく、廃止すべきである。
3 退職給付引当金の損金算入制度を創設すること。 (継続)
(理由)
労働協約や就業規則等による退職金規程は、将来の債務や労働条件として企業にとって強い拘束力がある。当該事業年度において発生する退職金要支給額は、将来において支出される蓋然性が非常に高い。また、退職金の金額は規程により合理的に算出され、企業会計上も退職給付引当金は、負債性引当金として計上することが要求されている。
しかし、法人税法の債務確定基準においては、退職という給付原因が具体的に発生していないため、退職給付引当金繰入額の損金算入は認められていない。また、本来の期間費用である退職給付引当金について、退職事業年度まで損金算入を行わないことは、企業の税負担の平準化につながらない。
労働協約及び就業規則等により、退職給与の支給規程を定めている法人については、その規程による退職給与要支給額の当期発生額の損金算入を認めるべきである。
4 清算中の通常の所得課税において残余財産を超えて税負担をすることのないような措置を行うこと。(法法59) (新規 新潟)
(理由)
清算所得課税の廃止及び通常の所得課税への移行に伴い、内国法人が解散した場合に残余財産がないと見込まれるときは、期限切れ欠損金の一定額の損金算入が認められることとされた。しかしながら、含み益のある資産を売却して銀行借入れの返済などを行った結果、少額の残余財産が残った場合には期限切れ欠損金が損金算入されることがなく、残余財産を超える納税を求められることとなる。これは担税力のないところに課税することとなるため、残余財産を超えて納税負担を求められることのないような措置をすべきである。
5 グループ法人税制において、完全支配関係と定義される関係のうち、兄弟がそれぞれ株主である別々の会社については、お互いがその企業の法人税法上の役員でない限り、グループ法人税制を適用しないようにする。(法法2 12の7の6) (新規 群馬)
(理由)
法人税法2条十二の七の六で完全支配関係が定義され、個人が同族関係にある場合(法人税法施行令第4条〉には、その範囲で100%完全支配関係の法人間の取引は、グループ法人税制が強制適用されることになっている。
これにより、たとえば個人Aが直接完全支配している会社BとAの実の弟Cが直接完全支配している会社Dとがそれぞれ互いに実質的な経営上の影響力がない場合であっても、グループ法人税制は強制適用されるため、固定資産の譲渡損益が繰り延べられることとなるケースが想定される。
これはむしろ自由な経済取引を阻害することになる。本ケースでは兄にしても弟にしてもお互いの会社の経営には全く従事しておらず、何ら経営の影響力がないのにもかかわらず、譲渡損益を税務上認識しないのは理解しえないのではなかろうか。
この法律が制定された趣旨は、それ以前の法人税法ではグループ内の取引に税金がかかる為、柔軟な資産の組み換えが行われず、グループ経営に支障をきたしているという経済界からの要望と、グループ内取引にも関わらず、法を利用して譲渡損を計上し、グループの税負担を軽減させてきたことを防止するという、税務当局側からの理由がある。
しかし、例に示したように、経営上まったく影響を及ぼさない場合の個人間においてまで、グループ法人税制を包括的に強制適用させることは、本来の趣旨から逸脱していると考える。
四 所得税法・法人税法共通関係
1 少額の減価償却資産、繰延資産の取得価額の必要経費算入額又は損金算入額を、30万円未満とすること。 (所令138、139、措法28の2、法令133、133の2、措法67の8、所令139の2、法令134) (継続)
(理由)
税制の簡素化を考慮し、一括償却資産又は中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入、必要経費算入制度を廃止すべきである。また、事務処理の簡便化、償却資産の多様化、金額的重要性等の観点から、損金算入又は必要経費に算入できる少額減価償却資産、少額繰延資産の取得価額を30万円未満として統一し、恒久化すべきである。
2 電話加入権について減価償却資産として償却を可能とすること。(所令6、法令12) (継続)
(理由)
電話加入権は、無形固定資産として減価償却ができないこととされているが、現在では電話債券の引受義務はなく、設備費のみの負担で済むようになっているため、市場での取引価値はない。従って、現在無形固定資産として計上されているものも含めて、償却を可能とすべきである。
五 相続税法関係
1 財産評価の基本的事項については、法令において規定すること。(相法22) (継続)
(理由)
相続税法22条には評価の原則しか定められていないため、実務上は通達に依存している。相続税・贈与税においては、財産評価が課税標準に及ぼす影響が極めて大きく、その通則が法令に定められていないことは、租税法律主義の観点から容認できるものではない。
2 後発的事由がある場合の更正の請求期限を、事由が生じたことを知った日の翌日から1年以内とすること。(相法32) (継続)
(理由)
この規定は、後発的事由による権利救済としての規定であり、その目的を達成することができるよう、手続期間を十分確保する必要がある。
3 非上場株式の納税猶予制度の適用条件を緩和すること。(措法70の7の2〜70の7の4、措法令40の8、措法令40の8の2) (新規 新潟)
(理由)
納税猶予の適用を受けた後の5年間に、常時使用従業員数の数が従業員数起算日における従業員数の100分の80を下回る数となった場合に経済産業大臣による認定が取り消され、納税猶予が打ち切られ、猶予税額の全額と利子税を合わせて納付しなければならないが、中小企業の経営環境は不安定で黒字企業割合が30%に満たない状況では、この条件を維持することは難しいと思われるため、廃止すべきである。
経済環境が大きく変化する中で、現行のように雇用環境を5年間にわたり予測することは非常に困難であり、事業承継に大きな支障をきたしている。適用条件を緩和することで、中小企業の事業承継を積極的に進めることができる。
4 住宅取得資金の贈与に係る贈与税の非課税条件の緩和を図る。(措法令40の4の2、措法令40の5) (新規 栃木、埼玉)
(理由)
耐用年数表によると鉄筋コンクリート住宅用などは47年、木造住宅は22年であり、耐火建築物の既存住宅の適用要件は、耐火建築物以外の既存住宅の20年要件に比べると課税の公平性からみても問題がある。最近の実例では中古マンションを購入、リフォームのうえ住宅として使用する者も多い。新耐震基準が施行されて30年が経過し、不動産取得税における中古住宅の特例では、昭和57年1月1日以降の建物は新耐震基準に適合しているとみなすことになっていることも考慮すれば、耐火建築物の既存住宅の適用要件を緩和し、30年に延長してもよいと考える。
また、景気対策として、眠っている親世代の金融資産を掘り起こし、若年層を中心とし住宅取得を促進できる。
六 消費税法関係
1 納税義務の免除制度を申告不要制度に改めるとともに、申告不要及び簡易課税制度の適用については、基準期間ではなく、当該課税期間における課税売上高に基づいて判定する制度とすること。
また、簡易課税制度の適用については、届出制を廃止し、その選択は申告書の記載要件とすること。(消法2、9、37) (継続)
(理由)
煩雑かつ錯誤の原因となっている基準期間制度は、廃止すべきである。
申告の要否や、簡易課税制度選択適用の可否は、当該課税期間の課税売上高に基づいて判定できるようにし、その旨当該申告書に記載すれば十分足りるものと考える。
2 「帳簿及び請求書等の保存」の要件については、「帳簿又は請求書等」と改め、事業者に過度の負担を生じさせないよう、帳簿における記載事項の整備を図ること。(消法30─∩舎。牽兇裡粥法 雰兮魁
(理由)
「帳簿及び請求書等の保存」の要件においては、帳簿への形式的な記載が必要とされ、能率的に事務処理をする記帳実務の中で、事業者の負担が大きくなる可能性もある。検証性を重視する見地からは、まず「請求書等の保存」を中心として位置付け、請求書等に不備がある場合に限り、帳簿への記載によってその補完を求めることとすべきである。帳簿の記載要件を緩和しても、課税取引の事実の検証は十分に可能である。
よって、合理性や効率性を前提とする記帳実務の実態に配慮した仕入税額控除制度を整備すべきである。
3 中間申告制度を見直し、選択により中間で納税できる範囲を拡大すること。(消法42) (継続)
(理由)
現行の消費税の納税にあたっては、中間申告時及び確定申告時にまとまった納税資金を準備する必要がある。小規模の新規納税義務者の発生及び景気の低迷による滞納が発生することを防止するため、納税者の選択により対象納付税額にかかわらず中間で納税できる範囲を拡大すべきである。
4 法人事業者について、法人税の確定申告期限の特例を受けている場合においては、消費税の確定申告期限についても、課税期間終了後3か月以内にすること。(消法45) (継続)
(理由)
法人における消費税の申告実務は、法人税申告と並行して行わないと正確な計算ができない。法人税の確定申告書の提出期限延長を受けている法人については、課税期間終了後3ヶ月以内とすべきである。
七 地方税法関係
1 個人事業税の事業主控除額を年290万円から年500万円に引き上げること。(地法72の49の10) (継続)
(理由)
国税庁の統計によれば、わが国のサラリーマンの平均給与額は、406万円(平成21年)となっている。この点を考慮して、適正額まで事業主控除額を引き上げるべきである。
2 不動産取得税について、次の改正をすること。(地法73の7) (継続)
(1) 婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与により取得した居住用財産に係る不動産取得税については、非課税とすること。
(2) 相続時精算課税制度適用者が、特定贈与者から贈与により取得した不動産に係る不動産取得税については、非課税とすること。
(理由)
夫婦は、財産を共同で築き上げてきたと解するのが妥当である。従って、一定の条件下において行われた、夫婦間における不動産の移転については、不動産取得税を非課税とすべきである。
また、相続による不動産の取得については非課税になっていることから、相続時精算課税制度適用者が、贈与を受けた不動産についても不動産取得税を非課税とすべきである。
3 固定資産税・都市計画税を次のように改めること。(地法341、343、349の2、409
(1) 償却資産に係る固定資産税について、以下のような見直しをすること。 (継続)
―却資産の評価について、法人税法等の改正に合わせて、残存価額をなくした新たな定率法により計算することとし、また、租税特別措置法により中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用を受けた資産については課税対象としないこと。
◆―却資産に係る固定資産税の賦課期日を当該法人の事業年度末日(個人は12月31日)とし、申告書の提出期限を法人税・所得税の申告期限と一致させること。
中長期的な地方税財政制度の抜本的改革のなかで、償却資産に係る固定資産税については廃止すること。
(理由)
‘韻現却資産でありながら、国税・地方税で取扱いが違っていると納税者の事務処理も煩雑となる。また、設備投資の促進による経済活性化の点からも、償却資産に係る固定資産税の評価額を高いままで据え置くことは望ましくない。
◆)/佑凌醜雹務を簡素化するために、償却資産に係る固定資産税の賦課期日を事業年度の末日(個人は12月31日)とし、申告書の提出期限を法人税・所得税の申告期限と一致させるべきである。
償却資産に係る固定資産税の負担は製造業など特定の業種に偏在し、設備投資に対してマイナスの効果がある。また、国際的にも、償却資産に対して固定資産税を課税している国は少ない。償却資産を保有することに課税がなされ、さらにそれが将来もたらすキャッシュフローや効用について住民税が課されるのは二重課税になる可能性があるため課税の根拠にも問題がある。
(2) 土地評価の適正化を図ること。 (継続)
(理由)
現行の土地の評価額が現実の取引価格を上回る事例が散見される。また、その評価方法も不透明な側面を持ち、隣地との比較もできない。
税負担の公平化、透明性を高めるためにも、収益還元価格を基準とする評価方法を導入するとともに、現行の負担調整措置の適正化・均衡化を図るべきである。
(3) 家屋評価の適正化を図ること。 (継続)
(理由)
現行の家屋の評価額は、再建築価格を基準とする評価方式が取られている結果、建物の評価額が実勢価格を上回るケースが散見されるようになってきている。経年減点補正率基準表に定める経過年数、残価率を見直すとともに、建築設備については別途独立した経年減点補正率基準表を定め、実態に応じた評価を行うことが必要である。
(4) 固定資産税の名義人課税主義を原則真実の所有者に変更すること。(地法343)(継続)
(理由)
地方税法は固定資産税の納税義務者に関して、名義人課税主義を採用しているが、固定資産税の応益税的性格から考えれば、真実の所有者が税を負担すべきである。
そこで、台帳名義人が真実の所有関係を明らかにする書類を提出した場合には、登記の移転がなくとも、真実の所有者に課税するように制度を改めるべきである。
(5) 新築住宅に対する固定資産税の減額措置の適用年数を見直すこと。 (新規 栃木)
(理由)
住宅を新築した場合に、3年間税額を1/2とする措置がとられている。他方、新築の中高層耐火住宅等の税額の減額については適用年数が5年である。どちらも居住用家屋としての性格は同様と考えられるため、適用年数を同じにすべきである。
4 事業所税を廃止すること。(地法701の30〜32、735) (継続)
(理由)
事業所税は、企業が大都市に集中することにより、インフラ整備等の財政支出を伴うことから創設された。いまや、大都市には都市機能が整備され、たとえ多くの事業所が集中しても円滑に企業活動ができるようになってきている。税制創設の目的は存在しなくなったため廃止すべきである。
5 ゴルフ場利用税を廃止すること。(地法75) (新規 群馬)
(理由)
ゴルフ場利用税の税収は598億円(平成20年度決算額)であり地方公共団体にとっては重要な財源である。しかし、ゴルフ場の利用料金が低下傾向にある中では、その利用が相当高額な消費行為とは言い難く、いわゆる「贅沢税」としての性質をもつゴルフ場利用税の課税根拠は失われているため廃止すべきである。
■ 税務行政に関する建議・要望項目
1 法令解釈通達は、内部通達を含めてすべて公開すること。 (継続)
(理由)
行政のあり方については、その透明性が求められている。法令解釈通達はすべて公開し、納税者の理解と信頼を得るべきである。
2 税務署に提出した書類の閲覧及び謄写に関する規定を整備すること。 (継続)
(理由)
納税者の便宜を考慮し、納税者及びその委任を受けた税理士に税務当局に保管されている申告書等の閲覧及び謄写ができるように、国税通則法に規定すべきである。
3 不動産取得税の賦課決定を早期に行うこと。 (継続)
(理由)
個人又は法人の決算において、適切な計算が行えないため、不動産取得後、二ヶ月以内に税額を確定することが必要である。
4 税務訴訟における判決を、データベース化して公表すること。 (継続)
(理由)
従来から、国税庁では、税務訴訟の判決を「税務訴訟資料」として網羅的に冊子化している。その目次ともいえる「判決要旨集」も作成し、行政判断の参考としているようである。税務訴訟の判決は、税務行政に対する司法判断であり、納税者にとっても、申告の際の判断材料となるものである。判決をデータベース化して公表することは、納税者の適正申告や円滑な税務行政に資するものとなる。
5 書面添付制度を活用したアフタールーリング制度の新設を求める。(税理士法33の2 通法60〜65、地方法 申告納税制度を採用している税目で規定されている附帯金関係の全条文) (継続)
(概要説明)
申告納税制度を採用する各税目につき、申告書提出時に税理士法に定める書面添付制度に基づいた添付書面を提出し、その添付書面にアフタールーリング制度の適用を受けたい旨の記載がある場合においては、課税庁がその適用の可否の通知を納税者に行い、その後アフタールーリング制度の適用を受け課税庁から通知を受けた公的な租税解釈が、提出した申告書に採用された解釈と異なることが確定した時は、その租税解釈に係る税額の増減につき、過少申告加算税等の附帯税を課さないようにする。
(アフタールーリング制度について)
申告書の提出期限時にその納付税額に影響を与える租税解釈について課税庁に照会を行った場合、その提出期限後において税務代理人たる税理士に公的解釈を通知する。申告書の法定期限前に課税庁に事前照会を行うアドバンスルーリング制度に対して、申告書の提出期限後に同様の公的解釈を税務代理人に通知することを制度の概要としたため、アフタールーリングと呼称した。
(理由)
我が国の税制は、その時の経済情勢、あるいは政府の政策等により大幅な改正がなされることが多々あり、今後も予想される。税制の大幅な改正直後には、課税庁においてもその運用方法が定まらず混乱を招くことが予想される。この制度を採用することにより大幅な税制改正があった場合においても十分対応することができる。
また、国税庁が運用している「事前照会に対する文書回答」制度が抱えている(現餡鹽前に申告期限が到来してしまう場合には回答を得られない ∨‥根拠を持たない といった問題を補完し、納税者の租税予測可能性の確保、税理士という税の専門家を通すことにより課税庁との不必要なトラブルを軽減し、申告納税制度の発展に寄与する。
6 財産評価基準書を過去4年以上の分も閲覧できるようにすること。 (新規 群馬)
(理由)
財産評価基準書は国税庁ホームページにて閲覧でき、税務署に行かなくても日本全国の路線価等を調べることができ大変便利であるが、閲覧できるのは本年度を含め3年度分のみである。さらに過去の評価額を知る必要がある場合もあると思われるので、過去4年以上分も閲覧できるようにしてもらいたい。更正等の期間制限との関連もあり少なくても過去7年分は閲覧できるようにすべきである。

会長あいさつ